また当然のことながら、同一横裁面における水圧分布の変化を見ると、センターライン付近にまず高圧部が現れ、それが順次チャインよりに移動してゆくパターンが一般的であるが、波の形状や出会角によっては、チャインより又はその中間に最初の高圧が出現することもある。前後方向の分布を見ると、スラミングを発生するときは最初の高圧点は前部であったり、中央部近くであったり又はその中間だったりする。
このような観察は船底衝撃の機構を考えるには役立つが、構造計算上の有効水圧を決定することは難しい。そこで、各部材の計測応力値から、その応力を発生するのに要する有効静水圧を逆算する。試験を行った艇の船底構造は、いずれもアルミニウム合金製、縦肋骨構造であって、ロンジフレームスペース約200〜250m、トランスリングスペース約1m前後のものである。
縦肋骨に対する有効静水圧の決定のためには、縦肋骨のスパンの中央点において、肋骨上縁の応力を計測し、それから両端固定として有効静水圧を計算する。肋骨上縁3点にゲージを貼って計測した場合、おおむね両端固定としての応力分布に近い値を示している。
船底傾斜修正を行った外板面の最高水圧P1に対し縦肋骨(小骨)に対する有効係数K1は、βt≦5°の船舶に対して0.667(2/3)、βt≧15°の船舶に対して0.333(1/3)とし、その中間は挿間法による。
計測例及び計算値との比較を表4.5に示す。
船底肋板の応力分布は、まず船体中心線にフランジ側引張の曲げが生じ、このとき、チャイン付近及び側肋骨は外板引張の曲げになっている。この状態を簡単に近似すると、チャイン間幅の中央部1/2に平均有効静水圧が作用し、その両端条件は1/2固着、それからチャイン、側肋骨にかけては曲げモーメントだけが働くものとして舷端において支持すると、割合に近い曲げモーメント分布になる。
次いで船体中心線の曲げモーメントは外板側引張に変じ、チャイン付近でフランジ側引張の曲げになる。この状態を簡単に近似すると、船体中心線において固定、チャインにおいて支持とし、その間に平均有効静水圧を受けるものに近い。
船底肋板に対する有効係数K2は、βt≦5°の船舶に対し0.167(1/6)、βt≧15°の船舶に対しては0.111(1/9)とする。
計測値の例とそれに対する言十算値を妻4.6に示すが、肋板曲げモーメント0に近い値となる位置は比較から除外する。
救難艇1のT1はフランジの応力、T2は外板の応力であるが、他はいずれもフランジで計測した応力である。
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